授業の進め方について

  • 本教材は概ね各項目を独立的に作成していますので,各学校の教育環境や授業時間数に合わせて,適宜,実施可能な項目を組み合わせ,授業にご活用下さい。
  • 全てをご利用になる場合には,上の項目から順番に進めて頂くと良いかと思います。

各項目の分類記号について

  • は実験形式の学習項目です。
  • は演習形式の学習項目です。
  • はフリーの画像解析ソフトGIMPを用いた学習項目です。

各項目の概要および補足説明

リモートセンシングについて

 人工衛星や飛行機に載せたセンサによって電磁波(紫外線,可視光線,赤外線などの光から電波まで含みます)をとらえ,遠くにある物体を観測する技術をリモートセンシング(Remote Sensing)と呼びます。

■ センサが観測する電磁波の出所
 センサが観測する電磁波の出所は,波長4μm付近を境に異なります。これよりも短い波長の電磁波(紫外線,可視光線,赤外線の一部)は,主に太陽光が地球の表面や大気で反射した電磁波であり,これよりも長い波長の電磁波(赤外線の一部,電波)は,主に地球の表面や大気自身が放つ電磁波です。今回使用するASTERデータは前者の電磁波を観測したものです。
 
なお,電波を観測するリモートセンシングには,センサから地球に向けて照射した電波を観測するものもあります。この種のセンサは,自然発生の電磁波をとらえる受動型センサに対して,能動型センサと呼ばれます。

■ 大気の影響
 地球の大気は様々な大気分子から構成されています。そして,各分子には特有の波長の電磁波を吸収する性質があります。従って,こうした吸収線が位置する波長の電磁波は地表から衛星に到達する間に減衰してしまい,衛星ではほとんどあるいは全くとらえることができません。地表を観測するセンサの場合には,こうした吸収線を避けて観測バンドが設定されます。なお,こうした大気分子の吸収線による影響を逆手にとって,吸収線の波長を観測することにより,大気自身を観測するセンサもあります。

■ 地表における反射
 地表の様々な物質も,それを構成する分子や結晶がそれぞれ特有の波長の電磁波を吸収するため,反射特性は各物質特有の波長依存性を持ちます。例えば,植物の葉に含まれる葉緑素(クロロフィル)は可視光では青と赤の光を強く吸収し,緑の光はほとんど透過する性質を持つため,植物の葉に入射した太陽光のうち,緑の光のみが反射(一部透過)し,結果として緑色に見えます。また,水は広い波長帯で大きな吸収係数を持っているため,広い波長帯で反射率がかなり小さいのが特徴です。
■ センサの観測バンド
 センサの観測波長(バンド)は,こうして大気の影響と地表の反射特性を考慮して,最適なものが選ばれます。例えば,地表を観測することを目的とするバンドは大気の影響が小さいことが条件となりますし,大気中の水蒸気量を測るセンサでは水蒸気の吸収帯にバンドが設定されます。また,地上の植生や植物プランクトンをとらえる場合には,葉緑素の吸収線に位置するバンドと,位置しないバンドを組み合わせると,より定量的な観測ができます。
 なお,観測バンドの数,空間分解能,観測幅にはトレードオフの関係があります。つまり,理想的には観測バンドがたくさんあって,空間分解能が細かく,かつ観測幅が広い(一度に広いエリアを観測できる)ならば都合が良いのですが,これですと観測データのサイズがとてつもなく大きくなってしまいます。衛星と地上局の間の通信容量には限りがあるので,センサの目的を考慮して,最適なバンド数,空間分解能,観測幅の組み合わせが決定されます。

■ 参考になるサイト
 リモートセンシングについての詳細は以下のページなどが参考になります。
 地球観測体験館(現:地球観測研究センター)・・・JAXA(旧:宇宙開発事業団)による地球観測の基礎講座

ASTERについて

 本教材のいくつかの項目では,経済産業省が開発したASTERというセンサのデータを利用して授業を進めます。ASTERはNASAの大型地球観測衛星Terraに他の4つのセンサ(アメリカのMODIS,MISR,CERESとカナダのMOPITT)と共に搭載され,1999年12月にカリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地から打ち上げられました。ASTERは,打ち上げ後の初期チェックを済ませた後,2000年9月末に定常運用に入り,順調に観測を続けています。
 ASTERは,可視近赤外波長帯(VNIR)に3バンド(0.52-0.86μm),短波長赤外波長帯(SWIR)に6バンド(1.60-2.43μm),熱赤外波長帯(TIR)に5バンド(8.125-11.65μm)を持つ高空間分解能センサで,空間分解能はVNIRが15m,SWIRが30m,TIRが90mとなっています。また,VNIRのバンド3には2方向から観測するステレオ視機能があり,これにより地表の標高を観測することができます.。
 ASTERの観測データはアメリカで受信された後,日本のERSDACに送付され,処理されます。処理後のデータはERSDACと米国地質調査所EROSデータセンターの2箇所から配布されています。

■ 参考になるサイト
 ASTERについての詳細は以下のページが参考になります。
 ★ ASTER地上データシステムプロジェクトのページ(日本語あり)
 ★ ASTERサイエンスプロジェクトのページ(日本語あり)
 ★ NASAジェット推進研究所のASTERプロジェクトのページ(英語のみ)

 地球観測衛星Terraについての詳細は以下のページが参考になります。
 ★ NASAのTerraプロジェクトのページ(英語のみ)


トップページ この教材について ご使用される先生へ 関連するリンク お問い合わせ