地球

宇宙利用拡大推進事業

  1. HOME
  2. 事業紹介
  3. 宇宙利用拡大推進事業
  4. パラグアイ「社会経済基盤開発に向けた宇宙計画管理プロジェクト」

宇宙利用拡大推進事業

パラグアイ「社会経済基盤開発に向けた宇宙計画管理プロジェクト」

南米での技プロ

2023年から2025年にかけて、JICA技術協力プロジェクト「社会経済基盤開発に向けた宇宙計画管理プロジェクト」に参画しました。プロジェクトでは、カウンターパートであるパラグアイ宇宙庁(AEP)と小型衛星開発、防災および農牧分野での衛星データアプリケーション開発を行いました。プロジェクトチームとして、パスコ株式会社および一般財団法人日本宇宙フォーラムと共同体を結成し取り組みました。

小型衛星開発

AEPでは、JAXAと九州工業大学の支援を受けて2021年にパラグアイ初の小型衛星「GuaraniSat-1」を開発して国際宇宙ステーション(ISS)から放出しました。プロジェクト期間中は後継機の「GuaraniSat-2」の開発を独自で行なっていました。プロジェクトでは、そのエンジニアリングモデルの試験を支援して、GuaraniSat-2のフライトモデル開発に移行することができました。

洪水ハザードマップの作成

国際河川であるパラグアイ川とパラナ川に挟まれた内陸国のパラグアイでは、河川の増水による洪水がたびたび発生し深刻な問題です。プロジェクトでは、関係省庁を巻き込んでワーキンググループを結成し、洪水対策の現状や衛星データ解析での課題解決手法について協議を重ねました。現地調査を実施し、衛星データや数値標高モデル(DEM)を用いて河川の増水による洪水被害シミュレーションを行い、その結果を活用してハザードマップの作成を行いました。作成したハザードマップについては、ワーキンググループにおいて活用方法や他の地域への展開についても協議が進みました。

作成したマニュアル

大豆生育モニタリング手法の開発

パラグアイは、世界第6位の大豆生産量を誇る農業国です。しかし、気候変動や世界経済の影響を受け生産性や収益が安定しない課題がありました。農業分野においても関係省庁とワーキンググループを結成し、現地調査、定常的なデータ収集およびデータ解析等による大豆生育モニタリング手法の開発を行いました。手法はマニュアルにまとめられ、AEPより公開されました。

作成したマニュアル

本邦研修

小型衛星開発と衛星データ利活用の2コースを設けて本邦研修を2024年に実施しました。
小型衛星開発では。九州工業大学で6か月の基礎的な小型衛星開発についての研修を行ったほか、「GuaraniSat-2」のエンジニアリングモデルの試験を2か月行いました。
衛星データ利活用では、東京、岐阜、静岡、北海道で研修を行いました。東京では、CONSEO参加企業とのビジネス交流会のほか、防災科研や農研機構、JAXA等を訪問して衛星データ利活用等について研修を行いました。岐阜では、洪水シミュレーションの基礎を岐阜大学で行ったほか、米の圃場で現地調査実習を行いました。静岡では静岡県での災害対策について研修を行ったり、ArkEdge Space社の地上局視察やワークショップを行いました。さらに、北海道では、北海道大学の協力を得て黒松内の牧場での調査を行ったり、スマートリンク社の協力を得てスマート農業の体験や衛星データ利活用について研修を行いました。

今後の運用を見据えて

今回のプロジェクトでは、プロジェクトチームにとってもAEPにとっても収穫の多いものとなりました。AEPは2014年に発足し、2018年より実働が開始された比較的若い組織です。プロジェクト開始当初は、宇宙システムや衛星データ利活用についてもパラグアイ国内の関係省庁・大学においても技術力がバラバラであり、課題解決に向けた効果的な活用はこれからといった状況でした。プロジェクトをとおしてAEPの技術力が向上したのはもちろんのこと、ワーキンググループの活動によるパラグアイ国内の関係省庁との連携が強化され、宇宙システムや衛星データ利活用について理解が深まり活用が広がりました。さらに、日本との連携も強化され、2024年の岸田前首相の訪問、日本パラグアイ宇宙協力委員会の発足、さらには宇宙技術関連施設にかかるODAの計画も始まりました。国際的な枠組みの中で宇宙利活用が促進されることを期待しています。