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宇宙利用拡大推進事業

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宇宙利用拡大推進事業

海洋プラごみ対策


近年、海洋プラスチックごみが国際的な環境問題となっています。機構では、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)のClosing the Loopという活動の中で、ASEANの都市から海へ流出するプラスチックごみの流出をモニタリングするためのデジタルツールを構築しています。

ポイント

ASEANの都市で発生するプラスチックごみをモニタリングするために:

  • モニタリングのためのデジタルツールの開発
    • 簡易なWebGISの開発
    • スマホアプリの開発
  • 自立的持続的な活動体制の構築
    • 大学(カウンターパート)との連携
    • 市民参加型の現地調査体制の構築
  •  イノベーション
    • 慶應大学とのAI活用連携
    • ジェネシア社製LCTF

デジタルツールの開発

従来、衛星データやGISデータをマッピングし、データを共有するためには、ハイスペックなサーバやネットワーク環境が必要でした。しかし、途上国の地方では、そのような環境を整備したり人材を集めることは困難です。そこで、機構では、2015年にGDSS (GIS Data Sharing System)の開発を行いました。GDSSは、ノート型PCでも稼働する軽くてシンプルなシステム構成、安価な導入費をコンセプトに開発されています。これにより、ITに詳しくない地方政府の職員も簡単にGDSS上で収集したデータをマッピングし、対象地域の状況を把握することが可能です。

Plastic Hotspots in Da Nang: Plastic waste locations were collected by University of Da Nang. Tidal lines can be estimated by GCOM-C, and plastic wastes can be deposited there.



現地の情報を収集するために、機構ではFIELDNAUTを開発しました。FIELDNAUTはスマートフォンアプリで、GNSSからの信号を受けてユーザの位置情報を記録するほか、写真、テキストを位置情報と記録することにより、現地の様子をまとめることができます。FIELDNAUTで収集したデータは、geoJOSNフォーマットおよびKMLフォーマットでまとめられ、メールやSNSをとおして共有することが可能です。本プロジェクトでは、FIELDNAUTからのデータがGDSSに集約され、プラスチックごみが都市のどこに溜まっているか、プラスチックゴミがどこからか線に流出しているかを確認することができます。

自立的持続的な活動体制の構築

COVID-19の影響で、ASEANの都市に渡航することができません。機構では、独自の人的ネットワークを活用して、現地の大学や研究機関とMOUを結び、現地での活動を支援してもらう仕組みを構築しました。現地の大学が学生や地域コミュニティに働きかけ、FIELDNAUTなどのスマホアプリを活用しどこにプラスチックごみが溜まっているかを定期的に調査します。さらに、都市を流れる河川の上流と下流にかかる橋の上から河川を流れるプラスチックごみをカウントします。これにより、広範囲な都市でも定量的なプラスチックゴミの排出場所および排出量が推定できます。地方コミュニティの協力を得ながら活動することで、自立的かつ持続的なモニタリング体制の構築を目指しています。

Overview of Sustainable Plastic Waste Monitoring System: Academia support citizens to collect plastic waste location information by mobile apps. Local government archive and analyze data from citizens, satellites and GIS analysis. They utilize collected data for make and execute effective plastic waste collection regulations.

イノベーション

人工知能や機械学習を活用したプラスチックごみモニタリングを行うため、機構では慶應大学清木研究室の協力を得て、プラスチックごみモニタリングにかかるAI解析連携に取り組んでいます。清木研究室では、5Dと呼ばれるAIを開発しています。本プロジェクトでは、GDSSに取り込まれた写真からプラスチックを判読するシステムを開発しています。一方、機構では、これまでの衛星データ解析の知見を活用して、スペクトラルAIの開発に取り組んでいます。プラスチックには特定の赤外線領域(1,660 nm – 1,740 nm)に独特な光の吸収帯があります。これを活用してプラスチック素材を分類することに取り組んでいます。これらの技術を組み合わせることで、市民が収集したデータからどれだけプラスチックごみが街に散乱しているか把握できる他、人工衛星データを用いた広域なプラスチックごみの分布マップを将来開発することができます。

Overview of Spectral AI: Plastic materials have unique absorption curves btween 1,660 nm and 1,740 nm. GDSS calculate the object materials by comparing the spectral library.



株式会社ジェネシアは、独自の技術を用いて小型のLiquid Crystal Tunable Filter (LCTF)と呼ばれるセンサを開発しています。このセンサは、電気信号をフィルターに送ることでフィルターを通す光の波長を自由に変更できます。この技術を用いることで、特定の物質を識別することができるようになります。また、このセンサはJAXAの革新的衛星技術実証3号機として打ち上げられる超小型衛星(東工大うみつばめ)のミッション機として搭載され、2022年に打ち上げられる予定です。機構では、ジェネシア社および東工大谷津研究室の協力を得ながらLCTFによるプラスチックごみモニタリングに取り組んでいます。

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