さあ,いよいよ最終章です.
「ヒートアイランド」という言葉,聞いたことはありますか?

都心部では,郊外より気温が高いといわれています.なぜなのでしょうか.
下の絵をみながら,少し考えてみましょう.
まちは,昼間に太陽光を受けて表面温度が上昇しているのです.右のサーモグラフィの熱画像では,コンクリートでつくられた建物の屋根が極端に高くなっていますね.

でも,植栽を施したところの下では,このように気温に近い涼しそうな空間ができています.


このように,建物や道路で覆われているまちは,温度の高いところがどうしても多くなってしまいます.すると,その近くの空気に熱が受け渡されて,気温が上昇してしまうのです!

それだけではありません.自動車では排気ガスやラジエターで熱交換をしていますから,やはりその近くの気温があがります...そういえば,鉄道駅のところでちょっとだけ触れましたが,冷房している列車は発生熱量が大きいんです.
・・・まてよ,そういえば人間の体も気温より高い「体温」がありますから,どんどん周りの空気に熱を与えていますね.キミの吐息も熱いでしょ?


人口密度が大きい都市では,このように「まちの表面温度が上昇しやすい」ことと,「エアコンや車などが大変におおい」ことのために,気温が上がりやすいのです.ただでさえ,夏の「再放射」が深刻そうなのに,気温も高いと暑くて住めないまちになってしまうかも...
すこし,海外に目を向けてみましょうか.
赤道直下の常夏のまちですと,事態はもっと深刻かもしれません...


これは,フィリピンという常夏の国.首都はマニラです.

この図は,街の表面温度が気温よりどのくらい高くなっているか,を示したものです.昼間13:00の状況です.
例えば赤いところでは,表面温度が気温より24℃も高いことを示しています.気温が36℃ぐらいですから・・・えっ! 60℃!!!


Manila City(マニラシティ)や大規模ショッピングモールなど,開発が進むと赤いですね.特に,マニラシティは,いわゆるバラック(掘っ立て小屋)が大変に密集している地域があり,そこには所得の低い人々の街が形成されています.建物はベニヤ板やトタン屋根などで簡単に作ってありますから,真昼になるとほとんど真上にある太陽からの日射を受けて,大変に表面温度が高くなるのです.
そうすると,そこに触れている空気の温度もどんどん上昇しますね.つまり,昼間に強烈なヒートアイランドが形成されやすいことがわかるでしょう.

下の図を見てください.左は建ぺい率,つまり建物がどのくらい混み合っているかを示していますが,マニラシティあたりは大変にすごいですね.また,右は緑被率,つまり樹木などの緑がどれくらいあるかを示しています.緑が少なくて,建物などに覆われていると,昼間の表面温度が高くなっているということがわかりますね.

緑が少なくなって,街がどんどん広がってきて,それが結果的に住みにくい環境を作ってしまっているのだったら,街に緑を取り戻せばいいのでは・・・

そんな発想で,少しいろいろデザインしてみました.

←中高層の建物には屋上植栽をしてみよう・・・

住宅は,1階を開放して風通しをよくしよう... →

こんなことを少しずつ取り入れていくと,ヒートアイランドは抑えられるのかもしれない...そう思って,コンピュータでその効果を予想してみました.
左側が現在の表面温度,右側が緑を工夫して取り込んでいったときの表面温度の,1日の移り変わりです.(気温よりどれくらい高いかで示しています).

いかがですか?結構涼しくなりそうな感じがしませんか?



「ヒートアイランドの何が問題なのでしょうか?」

これにきちんと答えることは,なかなか難しい問題でもあるのですが,わかりやすい例をご紹介しましょう.


まちの表面温度が上昇すると...まず,まちの空気の温度がどんどん上昇してしまいます.
まあそれだけで不快なことはもちろんなのですが,そうすると建物で冷房をかけますね.この「冷房」はくせものです.建物の室内から大量に熱を奪って冷やす代わりに,外にその大量の熱を捨てているのですから.しかも,大量の電気エネルギーをつかいながら...
外は,捨てられた熱によって,もっと気温が上がっていくことになりますね.


そうなると,冷房を中途半端にかけておいても不快ですから,もっと冷房を強くするでしょう.より電気を食いますし,外に捨てられる熱はもっと多くなります...


そう,例えば「電気エネルギーを際限なく使ってしまうことにつながっていく」のです!!!


電気エネルギーが有限なのは知っていますね.日本でも,火力発電所や原子力発電所をいくら作っても,夏の一番暑い日の冷房使用量に追いつかなくなっていることは,ニュースでよく耳にします.
マニラ近郊には,所得の少ない人々が多く,エアコンを自宅に自由に持つことができません.ある程度暑いのを我慢しているのですが,まあエアコンから大量に外に熱を捨てるということがないので,際限なく暑くなることもありませんし,際限なく電気エネルギーを使うこともありません.所得が限られている現状は,ある意味では幸いなことなのかも...

ただ,街は発展していきます.仮にマニラに住む人々の所得が急激に好転したら?そして,エアコンが仮に大量に導入されたら?
そしてさらに,世界中のまちでそんなことがどんどん進んだら...?


(そのほかにも例えば,ヒートアイランドがつづくと特定の虫が異常発生するなどのように,まちに住む生き物の「生態系」が狂ってくることにも関係している,という人もいます.)




さあ・・・ふりかえってみてください.日本のまちは「地球に優しい」といえるでしょうか?
じゃあ,いまみんなができることは何でしょうね.皆で考えてみましょう!


これは,2000年5月16日の10:48,衛星センサASTERによってとらえられた東京湾周辺の熱画像です.宇宙からのサーモグラフィ観測では,こんな絵を見ることができるのですね.

黄緑色の部分は,地面や建物が35℃ぐらいで気温よりやや高いくらいのところです.赤いところは地面や建物が50℃以上になっていることを示しています.

東京都心から下町,そして東京湾岸へと,地面や建物がとても熱くなっていることがわかりますね.